EVM(アーンドバリューマネジメント)の計算|SV・CV・SPI・CPI を例題でマスター

アーンドバリューマネジメント(EVM)の計算方法を、1つの例題を最後まで追いながら解説。PV・EV・AC の3値から SV・CV(差異)と SPI・CPI(効率指数)を求め、さらに EAC・ETC・VAC・TCPI で完成時のコストと工期を予測します。計算式の丸暗記ではなく「差なら引き算・効率なら割り算」という原理で、PMP® と情報処理 PM 試験の計算問題を確実に取れる形にまとめました。

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「EVM の指標が多すぎて、どれが差でどれが効率か覚えられない」——本記事はその混乱を、1 つの例題を最後まで追いながら解消します。結論から言えば、EVM の計算は PV・EV・AC の 3 つの基本値をそろえ → 差(SV・CV)は引き算・効率(SPI・CPI)は割り算で出し → その効率を使って完成時(EAC・VAC・TCPI)を予測する という 3 段階で、暗記ではなく原理で解けます。なぜなら EVM の指標はすべて「EV(出来高)を基準に、計画(PV)や実コスト(AC)とどれだけズレたか」を測っているだけだからです。

たとえば「進捗 80%」という報告があっても、それが計画どおりなのか、いくらコストを使った結果なのかは分かりません。EVM を使えば「予定より 40 万円分遅れている」「1 円あたり 0.8 円分しか価値を生めていない」と数字で言えます。本記事では、総予算 1,000 万円のシステム開発を題材に、実際に数字を追って全指標を計算します。出来高(EV)の考え方そのものは「EVM(出来高管理)入門|SPI・CPI で進捗と予算を1枚で読む実務」で実務目線から解説しているので、計算の前に読むと理解が早まります。

EVM の 3 つの基本値|PV・EV・AC をそろえる

EVM(Earned Value Management=アーンドバリューマネジメント)は、プロジェクトの進捗とコストを「金額」という共通の物差しで同時に測る手法です。すべての計算は、次の 3 つの基本値から始まります。ここがそろえば、あとの指標は機械的に導けます。

略語正式名称意味別名
PVPlanned Valueその時点までに完了している予定だった作業の価値(計画)BCWS
EVEarned Valueその時点までに実際に完了した作業の価値(出来高)BCWP
ACActual Costその出来高のために実際に使ったコスト(実績)ACWP

もう 1 つ、完成時予測で使う BAC(Budget At Completion=完成時総予算) を押さえておきます。BAC はプロジェクト全体の予算、つまり「予定どおり進めば最終的に PV が到達する金額」です。

例題の設定

本記事を通して使う例題を設定します。

総予算 BAC = 1,000 万円/全 10 か月のシステム開発。4 か月目終了時点で棚卸ししたところ、次のようになった。

  • PV = 400 万円(計画では 4 か月で全体の 40% が終わっている予定)
  • EV = 360 万円(実際に完了した作業を金額換算すると 36% 相当)
  • AC = 450 万円(そこまでに実際に使ったコスト)

この 3 つの数字だけで、遅れているのか・予算は持つのか・このままだといくらかかるのかが、すべて計算で分かります。

ステップ 1|差異(SV・CV)を引き算で求める

まずは「計画や予算からどれだけズレたか」を金額で見ます。差異はすべて EV を主語にした引き算で、プラスなら良好・マイナスなら要注意です。

指標正式名称計算式意味
SVSchedule Variance(スケジュール差異)SV = EV − PV進捗の遅れ/進み(金額換算)
CVCost Variance(コスト差異)CV = EV − AC予算に対する超過/節約

例題に当てはめます。

  • SV = EV − PV = 360 − 400 = −40 万円 → 予定より 40 万円分の作業が遅れている
  • CV = EV − AC = 360 − 450 = −90 万円 → 出来高に対して 90 万円分コストを使いすぎている

ステップ 2|効率指数(SPI・CPI)を割り算で求める

差異は「いくらズレたか(絶対額)」でしたが、効率指数は「どれだけ効率よく進めているか(比率)」を表します。差異が引き算だったのに対し、効率は EV を相手で割る割り算です。1.0 が基準で、1 を下回ると悪い状態です。

指標正式名称計算式判定
SPISchedule Performance Index(スケジュール効率指数)SPI = EV ÷ PV1 未満で遅れ
CPICost Performance Index(コスト効率指数)CPI = EV ÷ AC1 未満で予算超過

例題で計算します。

  • SPI = EV ÷ PV = 360 ÷ 400 = 0.9 → 計画の 90% のペースでしか進んでいない
  • CPI = EV ÷ AC = 360 ÷ 450 = 0.8 → 1 円使って 0.8 円分の価値しか生めていない

CPI = 0.8 は、「投じたコスト 1 に対して出来高が 0.8 しか返ってきていない」という意味です。このまま同じ効率が続くと予算を大きく超過する、という強い警告になります。

ステップ 3|完成時を予測する(EAC・ETC・VAC・TCPI)

ここからが EVM の真価です。現時点の効率(特に CPI)を使って、このまま進んだらプロジェクトは最終的にどうなるかを予測します。試験でも実務でも差がつくのがこの領域です。

EAC(完成時総コスト予測)

EAC(Estimate At Completion) は「最終的にいくらかかりそうか」の予測です。「現在の CPI がプロジェクト終了まで続く」と仮定する最も一般的な式を使います。

  • EAC = BAC ÷ CPI = 1,000 ÷ 0.8 = 1,250 万円

予算 1,000 万円のプロジェクトが、今の効率のままでは 1,250 万円かかる見込み、という予測です。

ETC(残作業コスト予測)

ETC(Estimate To Complete) は「ここから完成まであといくらかかるか」です。EAC から使用済みの AC を引くだけです。

  • ETC = EAC − AC = 1,250 − 450 = 800 万円

ETC =(BAC − EV)÷ CPI =(1,000 − 360)÷ 0.8 = 800 万円 と、残作業(BAC − EV)を効率で割っても同じ値になります。

VAC(完成時差異)

VAC(Variance At Completion) は「予算と最終予測の差」、つまり最終的にいくら足りなくなる(または余る)かです。

  • VAC = BAC − EAC = 1,000 − 1,250 = −250 万円

マイナス 250 万円、すなわち 最終的に 250 万円の予算超過が見込まれるという結論です。

TCPI(残作業必要効率)

TCPI(To-Complete Performance Index) は「予算内(または目標内)に収めるには、残作業をどれだけの効率でやる必要があるか」を示します。今後に求められるハードルです。

  • 予算 BAC 死守の場合TCPI =(BAC − EV)÷(BAC − AC)=(1,000 − 360)÷(1,000 − 450)= 640 ÷ 550 ≒ 1.16

現状の CPI は 0.8 なのに、予算を守るには残りを効率 1.16 で回す必要がある——現実的に厳しく、予算見直しか対策が必要だと数字で示せます。

EVM 計算を使うメリットと注意点

メリット

  • 進捗(SPI)とコスト(CPI)を金額という同じ物差しで同時評価できる
  • 現時点の効率から完成時(EAC・VAC)を早期に予測でき、手遅れになる前に対策できる
  • 「進捗80%」のような主観を、出来高ベースの客観数値に置き換えられる
  • 規模の違う複数プロジェクトを効率指数(率)で横並び比較できる

デメリット

  • EV(出来高)を正しく測るにはWBSと完了基準の整備が前提になる
  • 品質やスコープの妥当性までは測れない(数字上は順調でも中身が伴わない場合がある)
  • 小規模・短期のプロジェクトでは導入コストが見合わないことがある
  • 初期段階はデータが少なくEAC予測が安定しにくい

計算問題でつまずく 4 つの落とし穴

試験や実務でミスしやすいポイントを整理します。ここを押さえれば計算問題の失点はほぼ防げます。

  1. SV・CV と SPI・CPI の混同:差異(SV・CV)は引き算で単位は金額、効率(SPI・CPI)は割り算で単位なし(比率)。「差か効率か」で演算が決まります。
  2. PV と AC の取り違え:スケジュール系(SV・SPI)は PV、コスト系(CV・CPI)は AC と組み合わせます。EV は常に主語で共通、相手が PV か AC かだけの違いです。
  3. EAC の前提の読み違えBAC ÷ CPI(傾向継続)と AC +(BAC − EV)(一時的異常)は結果が大きく変わります。問題文の仮定を必ず確認します。
  4. 符号の意味の逆転:差異・VAC はマイナスが悪い(遅れ・超過)、効率指数・TCPI は基準が 1.0。0 と 1 のどちらが基準かを取り違えないようにします。

よくある質問(FAQ)

Q. SPI・CPI が 1.0 ちょうどのときは? A. 計画どおり(オンスケジュール/オンバジェット)です。SPI = 1 は予定ペース、CPI = 1 は予算どおりの効率を意味します。1 を超えれば計画より良好です。

Q. EAC の 3 つの式はどう選べばいい? A. 問題文の前提で決めます。「現在の傾向が続く」なら BAC ÷ CPI、「今回の超過は一度きりで残りは計画どおり」なら AC +(BAC − EV)、「進捗もコストも今の効率が続く」なら AC +(BAC − EV)÷(CPI × SPI) です。

Q. SV がマイナスでも SPI が 1 以上になることはある? A. 定義上ありません。SV = EV − PV がマイナス(EV < PV)なら、SPI = EV ÷ PV も必ず 1 未満です。差異と効率は同じ大小関係を、金額と比率という別の見せ方で表しているためです。

Q. TCPI が 1 を超えたら? A. 目標を守るには「今より高い効率」が必要という意味で、達成のハードルが上がっている状態です。現在の CPI と大きく乖離している場合は、目標(予算・工期)自体の見直しを検討します。

まとめ

EVM の計算は、指標の数こそ多いものの、原理は一貫しています。PV・EV・AC の 3 値をそろえ → 差は EV から引き算(SV・CV)・効率は EV を割り算(SPI・CPI)→ その効率で完成時を予測(EAC・ETC・VAC・TCPI)。この 3 段階と「差か効率か・相手は PV か AC か」の 2 軸さえ押さえれば、丸暗記に頼らず計算問題を解けます。

例題では、CPI = 0.8・EAC = 1,250 万円・VAC = −250 万円という結果から、「このままでは 250 万円超過する」と早期に数字で示せました。EVM の価値は、問題が起きてからではなく、傾向が見えた段階で先手を打てることにあります。まずは自分のプロジェクトの PV・EV・AC を 3 つそろえるところから始めてみてください。

※ PMP・PMI・PMBOK は Project Management Institute, Inc. の登録商標です。本記事は公開情報をもとに一般的な計算手順を解説したもので、特定の試験問題の解答を保証するものではありません。

出典・参考情報

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