PMP リスク管理 完全対策|リスク識別から対応まで
PMP® 試験のリスク・マネジメント(7 プロセス)を 1 本で対策。計画・特定・定性的分析・定量的分析・対応計画・対応策の実行・監視を解説し、最頻出の「脅威への 5 戦略(回避・転嫁・軽減・受容・エスカレーション)と好機への 5 戦略(活用・共有・強化・受容・エスカレーション)」、定量分析の EMV(期待金額価値)計算まで表で整理します。
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「PMP® のリスク・マネジメントは、プロセスが 7 つもあって順番が覚えられない」「脅威と好機の対応戦略がごちゃごちゃになる」——本記事はその 2 つの弱点を 1 本で解消します。結論から言えば、リスク・マネジメントは 計画 → 特定 → 定性的分析 → 定量的分析 → 対応計画 → 対応策の実行 → 監視 という一直線の流れ。そして試験で最も問われるのは、脅威への 4+1 戦略(回避・転嫁・軽減・受容+エスカレーション)と好機への 4+1 戦略(活用・共有・強化・受容+エスカレーション)の対応関係です。この骨格さえ握れば、紛らわしい選択肢も迷わず切れます。
本記事では リスクの 7 プロセスを順に解説し、脅威/好機の対応戦略と定量分析の EMV(期待金額価値)を頻出ポイントとして整理 します。1 つ前の領域は「PMP 品質管理 完全対策」、10 領域全体の地図は「PMP 試験 10 のナレッジエリア 完全解説」、時間軸である 5 プロセス群は「PMP 試験 5 つのプロセス群 完全解説」、受験資格や学習計画は柱記事「PMP® 試験完全ガイド」をご覧ください。
リスク・マネジメントとは|「不確実性に先回りする」
リスクとは、発生すれば プロジェクト目標(QCD)にプラスまたはマイナスの影響を及ぼす不確実な事象や状態 を指します。ここで重要なのは、リスク=悪いことだけではない という点。マイナスのリスクを「脅威(threat)」、プラスのリスクを「好機(opportunity)」と呼び、PMP® では両方を管理対象とします。リスク・マネジメントの目的は、脅威を減らし好機を増やすことで、プロジェクトの成功確率を高めることです。
リスク・マネジメントの 7 プロセス|全体像
PMBOK® 第 6 版では、リスク・マネジメントは 7 つのプロセス で構成されます。10 ナレッジエリアの中で最多のプロセス数で、所属するプロセス群もここが整理のカギです。
| # | プロセス | プロセス群 | 一言でいう役割 |
|---|---|---|---|
| 1 | リスク・マネジメントの計画 | 計画 | リスク管理の進め方・基準を決める |
| 2 | リスクの特定 | 計画 | リスクを洗い出し、リスク登録簿に記録 |
| 3 | リスクの定性的分析 | 計画 | 確率×影響で優先順位を付ける(主観的) |
| 4 | リスクの定量的分析 | 計画 | 全体への影響を数値化する(客観的) |
| 5 | リスク対応の計画 | 計画 | 各リスクへの戦略・対応策を決める |
| 6 | リスク対応策の実行 | 実行 | 計画した対応策を実際に実施する |
| 7 | リスクの監視 | 監視・コントロール | 残存リスク・新規リスクを追跡し見直す |
💡 覚え方:7 プロセスのうち 計画群が 5 つ(計画・特定・定性・定量・対応計画)、実行群が 1 つ(対応策の実行)、監視群が 1 つ(監視)。リスクは「事前にどれだけ計画するか」が勝負、という思想が配分に表れています。なお「リスク対応策の実行」は第 6 版で新設されたプロセスです。
① リスク・マネジメントの計画|進め方そのものを決める
最初のプロセスでは、プロジェクトで どのようにリスクを管理するか を定義します。リスクの分類体系(RBS:リスク区分構造)、確率・影響度の定義、ステークホルダーのリスク許容度(リスク選好)、役割と責任、予算とスケジュールへの組み込み方を決め、アウトプットとして リスク・マネジメント計画書 を作成します。
② リスクの特定|まずは「書き出す」だけ
2 つ目は、プロジェクトに影響しうるリスクを可能な限り洗い出すプロセスです。ブレーンストーミング、デルファイ法、SWOT 分析、チェックリスト、前提条件・制約条件分析、根本原因分析などの技法を使い、リスク登録簿(リスク登録簿=リスクレジスター) に記録します。
③ リスクの定性的分析|確率×影響で優先順位を付ける
3 つ目は、特定した個々のリスクを 発生確率と影響度 の 2 軸で評価し、対応の 優先順位 を付けるプロセスです。代表的なツールが 確率・影響度マトリクス(P-I マトリクス)。「高確率×高影響」のリスクを最優先で対応すべきリスクとして絞り込みます。評価はチームやステークホルダーの 主観的な認識 に基づくため「定性的」と呼ばれます。
④ リスクの定量的分析|全体への影響を「数値」で見る
4 つ目は、優先度の高いリスクが プロジェクト目標全体(コスト・スケジュール)に与える影響を数量的に分析 するプロセスです。モンテカルロ・シミュレーション、感度分析(トルネード図)、EMV(期待金額価値)分析、デシジョンツリー分析などを用います。
⑤ リスク対応の計画|脅威と好機で戦略が変わる
5 つ目は、各リスクに対して どう対応するか の戦略と具体策を決めるプロセスです。ここが試験の最大の山場。脅威(マイナス)と好機(プラス)でそれぞれ 4 つの戦略があり、両者に共通する「エスカレーション」と「受容」 を加えて整理します。
脅威(マイナスのリスク)への対応戦略
| 戦略 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 回避(Avoid) | 脅威の原因を取り除く/計画を変えて発生をなくす | スコープ縮小・難工程の中止 |
| 転嫁(Transfer) | 影響と対応責任を第三者へ移す | 保険・保証・契約(外注) |
| 軽減(Mitigate) | 発生確率や影響を許容範囲まで下げる | 冗長化・追加テスト・試作 |
| 受容(Accept) | 対応せず受け入れる(能動的=予備費/消極的=静観) | コンティンジェンシー予備の確保 |
好機(プラスのリスク)への対応戦略
| 戦略 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 活用(Exploit) | 好機を確実に実現させる(回避の裏返し) | 優秀な人材を投入し前倒し |
| 共有(Share) | 好機を活かせる第三者と組む | ジョイントベンチャー・提携 |
| 強化(Enhance) | 好機の発生確率や効果を高める | 資源の追加投入で効果増大 |
| 受容(Accept) | 積極的に追わず、来たら享受する | 特段の手は打たない |
⑥ リスク対応策の実行|計画を“絵に描いた餅”にしない
6 つ目は 実行プロセス群 に属し、第 6 版で新設されました。前プロセスで合意した リスク対応策を実際に実施する プロセスです。対応計画を立てても実行されなければ意味がない、という反省から独立したプロセスとして切り出されました。アウトプットは変更要求やプロジェクト文書の更新です。
⑦ リスクの監視|残存・新規リスクを追い続ける
7 つ目は 監視・コントロールプロセス群 に属し、合意した対応策の実施状況の追跡、残存リスク・二次リスク(対応策の実施によって新たに生じるリスク)の監視、新規リスクの識別、リスク・マネジメントの有効性評価を行います。
つまずきやすいポイント整理|よくある誤解 vs 正しい理解
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| リスク=悪いことだけ | リスクには 脅威(マイナス)と好機(プラス) がある |
| 特定の段階で確率・影響を評価する | 特定は 書き出すだけ。評価は定性的分析から |
| すべてのリスクに定量的分析を行う | 定量は 定性で絞った重要リスク に対して実施 |
| 好機に「回避」戦略を使う | 好機には 活用・共有・強化・受容 |
| 対応策を実行すれば監視は不要 | 二次リスク・残存リスク を監視し続ける |
| エスカレーションは脅威だけ | エスカレーションは 脅威・好機の両方 に共通 |
リスク・マネジメントを正しく回すメリット
- 脅威を事前に減らし、炎上・手戻りの確率を下げられる
- 好機を活用・強化し、プロジェクトの価値を高められる
- 確率×影響で優先順位を付け、限られた資源を重点配分できる
- EMV で予備費(コンティンジェンシー)の根拠を数値で示せる
リスク・マネジメントを軽視したときのリスク
- リスクを書き出すだけで分析・対応に進めず形骸化する
- 脅威と好機の戦略を混同し、的外れな対策を打つ
- 二次リスクを見落とし、対応策が新たな火種になる
- 定量分析を全リスクに課し、工数だけ膨らみ回らなくなる
まとめ|リスク管理は「計画して、分析し、対応し、追い続ける」
PMP® のリスク・マネジメントは、①計画 → ②特定 → ③定性的分析 → ④定量的分析 → ⑤対応計画 → ⑥対応策の実行 → ⑦監視 の 7 ステップで一直線に進みます。試験では、特定(書き出す)と定性的分析(確率×影響で優先順位)の役割分担、定性(主観)vs 定量(数値・EMV)の違い、そして最大の山場である 脅威への戦略(回避・転嫁・軽減・受容)と好機への戦略(活用・共有・強化・受容)+共通のエスカレーション が繰り返し問われます。“脅威と好機は裏表(回避↔活用・軽減↔強化)” と “EMV=確率×影響金額” の 2 点を手元に置けば、リスク分野は得点源になります。
注釈:
- PMP®、PMI®、PMBOK® は Project Management Institute, Inc. の登録商標です
- 本記事のプロセス構成・用語は PMBOK® 第 6 版に基づく執筆時点(2026 年 6 月)の整理です。最新の試験範囲(ECO)は必ず PMI 公式サイトでご確認ください